研究内容
主な研究テーマ(前田大地)
婦人科領域の外科病理学
婦人科領域の各臓器(子宮、卵巣、卵管)に生じる多様な腫瘍に関して、それらの病理診断に役立つ知見を得ることを目指して研究を行っています。同時に、腫瘍の成り立ちを理解するために次世代シーケンサーを活用して背景遺伝子異常を探索しています。また、非腫瘍部(正常上皮)に生じる遺伝子異常にも着目して、その臨床病理学的意義の解明に努めています。
子宮内膜間質結節の新規融合遺伝子の同定
卵管に生じるCTNNB1変異細胞集塊を”β-catenin signature”と命名
間質性膀胱炎の病態解明
本講座では腫瘍性疾患のみならず炎症性疾患も研究対象としています。間質性膀胱炎は膀胱痛、頻尿に特徴づけられる原因不明の難治性疾患で、その中でもハンナ型は指定難病認定されています。我々はハンナ型間質性膀胱炎が上皮剥離とB細胞主体の炎症細胞浸潤に特徴づけられる特異な疾患であることを明らかにし、さらに浸潤しているB細胞にclonalityがあることを世界に先駆けて報告してきました。現在、間質性膀胱炎の原因を明らかにすべく研究を進めています。
ハンナ型間質性膀胱炎におけるclonal B-cell expansion
次世代型の病理解剖の確立
病理解剖は病理学の根幹をなすものであり、その学術的価値は普遍的なものです。我々は病理解剖検体を用いた研究を積極的に行っています。具体的には次世代シーケンサーを活用した腫瘍の不均一性評価、屍体血中cfDNAの解析の実績があり、今後、シングルセル解析を含めて新たなアプローチを病理解剖研究に導入していきたいと考えています。
主な研究テーマ(堀江真史)
FFPE検体を用いた空間イメージング解析パイプラインの構築
肺癌を中心としたFFPE検体を対象として、Hyperionを用いたイメージングマスサイトメトリー(IMC:imaging mass cytometry)を行い空間情報を維持した免疫細胞プロファイリング等の新たな切り口での疾患解明に取り組んでいます。また並行してUppsala大学病理学教室のMicke Patrick教授と共同でUppsalaコホートの肺腺癌・約400症例の蛍光マルチプレックス免疫組織化学染色による空間イメージング解析も進めております。
イメージングマスサイトメトリーの解析パイプライン
TMAを活用した小細胞肺癌の包括的分子病理学的検討
金沢大学附属病院の病理部の協力を得て、過去約20年分の小細胞肺癌(SCLC)の手術例・約50症例、及びコントロールとして非小細胞肺癌の手術例・約50症例の組織マイクロアレイ(TMA: tissue microarray)を作成し、SCLCの包括的な分子病理学的検討を行っています。さらに空間遺伝子発現解析やゲノム・エピゲノム解析等と組み合わせる多層オミクス解析を行うことで、SCLCの新規治療標的や診断マーカーの同定、及び病態解明に取り組んでいます。
SCLCのTMA(左)と免疫組織化学染色によるmolecular subtyping(右)
病理解剖検体を用いた肺癌のエピゲノム不均一性解明
Tn5トランスポゼースを活用した新規エピゲノム解析技術に注目し、ATAC-seqによるクロマチン構造解析やCUT&Tagによるヒストン修飾解析の実験系の改良・樹立に取り組みと肺癌のエピゲノムの網羅的プロファイリングを行ってきました(Horie et al. Cancer Science. 2023)。病理解剖検体では生前には検体が採取困難である放射線・化学療法治療後や多数の転移巣の検体が入手可能であり、本エピゲノム解析手法を活用することで肺癌における原発巣・転移巣におけるエピゲノムの不均一性の解明に取り組んでおります。
ATAC-seqやCUT&Tagによるエピゲノム解析
シングルセル解析を活用した様々な疾患病理の解明
東京大学呼吸器内科や金沢大学呼吸器内科、金沢大学血管分子生理学教室と共同でヒトの病理検体やマウス疾患モデルを用いたシングルセル解析を行い、細胞の不均一性や分化の過程を詳細に解明し、様々な疾患の診断・治療への応用へつながる研究を行っております。
呼吸器疾患マウスモデル(ACO)を用いたシングルセル解析
(東京大学呼吸器内科との共同研究)
(東京大学呼吸器内科との共同研究)